最初の10分ほどは静寂な空間で。
文字を書くカリカリとした音だけが響いていたが。
急にチューキチ君が「うぉー」と言い出したので。
ヒナはビクッと肩を震わせた。
「わかんないすよ。数学。なんすかコレ」
と言ってチューキチは教科書を指さす。
「あぁ、コレ? シオン教えてあげなよ」
「……」
エマに言われて嫌そうな表情をしたシオンだったが。
教科書を見て。
ノートに図式を書きだした。
「ここはXがこうなるから…」
丁寧に教えているシオンにぽかんとするヒナ。
「おぉ! わかりやすいっすね」
と言って。チューキチが大声を出す。
「じゃあ、次コレ」
と今度はチューキチは違う問題を指さす。
「ああ、コレは…」
(あれ、案外。真面目に答えてくれるんだな)
ヒナはシオンを見て思った。
人見知りの激しいシオンだから。
チューキチを見て教えてくれないのではないかと思ったが。
ぶっきらぼうなりに。
丁寧に教えてくれる。
「シオンは数学、全国模試で1位取ったこともあるからねー。今のうちに何でも訊いたほうがいいよ」
エマが隣で得意げに答えた。
「おぉ! すげー」
チューキチがまた、大きな声を出す。
思った以上に。森兄妹と喋ってくれるので。
ヒナは良かったと心から安心した。
ま、ただ。
喋るのは初めてだから2人とも顔が怖いが…。
1時間ほどすると。
流石にくたびれたのか。
ノートに文字を書くペースがだんだん遅くなってきた。
「おい、ヒナ。お昼ご飯作ったけど」
ドア越しにホタルの声がする。
「お、みんな。ホタルがお昼ご飯作ってくれたって。行こう!」
ちょうど、だらけてきたところだったので。
ホタルの一声がちょうどよかった。
ダイニングルームに行くと。
テーブルの上に手巻き寿司の具材が置かれている。
「えー、昼から手巻き寿司!?」
てっきり麺類だろうと思っていたので。
テーブルいっぱいに手巻き寿司の具材が置かれているのを見てヒナは驚いた。
刺身類は勿論、
卵焼きにきゅうり、ツナマヨ、魚肉ソーセージ。
生姜焼きらしき肉類。
そして、酢飯。
正方形の海苔。
色とりどりの具材にエマは「わぁ」と声を漏らした。
「俺、皆の好き嫌いわかんないからさ。思い切って手巻き寿司にしてみた」
「ホタルさん、凄い~」
エマが高い声をあげる。
「さ、食べよう」
ホタルの一声で皆席につく。
「今、お吸い物用意するから」
ホタルはキッチンに向かった。
先ほどと同じように。
エマの隣にはシオンが座り。
向かい側にヒナとチューキチが座った。
「いただきます」
海苔を持って。
嬉しそうにエマが酢飯を乗せる。
「こんな豪華なご飯食べてるんすねー」
チューキチもうれしそうだ。
「え、チューキチ君。別にこんなの豪華じゃないよ」
「いーや。箕輪っちが羨ましいすよ」
そこに、ホタルがやってきて。
お吸い物を皆の前において。
ヒナの隣に座った。
「箕輪っちは凄いっすな」
「何が?」
ヒナがお吸い物をすすっていると。
チューキチは感心したように。
「だって、その年でこんな料理上手な彼氏さんと同棲しているんでしょ?」
ぶっ!
その一言を聴いて。
急にシオンがゲラゲラと笑い出した。
笑い出したと思えば今度はゲホゲホとむせ始めた。
「シオン、お茶飲みなよ」
エマがシオンに麦茶を渡す。
「なんすか、何で笑うんすか?」
チューキチがシオンに言うと。
今度はホタルがぶっと声を出して笑い出した。
「俺とヒナが恋人同士に見える?」
「え、違うんすか?」
きょとんとチューキチがホタルを見る。
ヒナはじぃーとホタルを見た。
「俺とヒナって結構、男女の兄妹の割には似ているほうだと思うんだけど…」
「うん。チューキチ君。ホタルは正真正銘、私の兄だよ」
「マジっすか? え、じゃあ血の繋がらない兄妹っすか」
ぶっ!
麦茶を飲んでいたシオンが咳き込んで。
ゲラゲラと笑い出した。
「面白すぎる…」
シオンが腹を抱えて笑っている。
「え、違うんすか。じゃあ腹違いの兄妹とか?」
「…あのねぇ、チューキチ君。昼ドラの見過ぎじゃない?」
最早、あきれ返ったヒナである。
「なんで、チューキチ君はヒナちゃんとホタルさんのこと兄妹じゃないって思ったの?」
エマが卵焼きときゅうりを巻いた手巻き寿司を食べながら言う。
「え、だってお兄さんのこと名前で呼んでいるから…」
「え、それだけの理由!?」
シオンとホタルは笑いのツボにはまったのか。
またゲラゲラと笑い出した。
「俺、姉貴がいるんすけど。絶対に名前で呼ぶなって言われてるんすよ」
「え、だからって名前で呼んだらカップルになるの?」
チューキチとヒナの噛み合わない会話を聴いて。
ただひたすらにシオンとホタルは笑う。
エマだけはきょとんとして。
「そういえば、確かに。ヒナちゃんってホタルさんのことお兄さんって呼ばないよね」
「え!? それ言うならエマだってシオン君のこと名前で呼んでるじゃない」
「うちは年子だから、そんなに年だって離れてないもの」
「え、うちも3つ違いだよ」
「1つと3つは違うじゃない」
エマの謎理論にヒナはフリーズする。
「俺が、ヒナに『お兄さん』って呼ぶなって言ったんだ」
「へえ、うちと逆なんすね」
チューキチがホタルの言葉に頷く。
「チューキチ君。このホタルはね。妹に凄いこと言ったからね」
「へー。何て言ったんすか?」
「私の口からは言いたくないよ。キモいんだって。この人」
うんざりした表情でヒナはホタルを見る。
ホタルは真顔になった。
「チューキチ君だっけ?」
「はい」
「たとえ、妹であってもね。ヒナは一人のレディーなわけよ」
「はい…」
「だから、俺はヒナを一人のレディーとして見るためにお兄さんとか妹っていう括りを捨てたわけさ」
「……」
うわっ。
真顔で何言ってんだろうと。
改めてヒナはドン引きをした。
「なるほど! さすがっすね」
感心するチューキチを見て。
今度はエマがぶっ! と笑い出した。
「ところで、ホタルって名前はホスト名か何かっすか?」
真顔で答えるチューキチに。
ただひたすら、笑いまくる一同であった。
文字を書くカリカリとした音だけが響いていたが。
急にチューキチ君が「うぉー」と言い出したので。
ヒナはビクッと肩を震わせた。
「わかんないすよ。数学。なんすかコレ」
と言ってチューキチは教科書を指さす。
「あぁ、コレ? シオン教えてあげなよ」
「……」
エマに言われて嫌そうな表情をしたシオンだったが。
教科書を見て。
ノートに図式を書きだした。
「ここはXがこうなるから…」
丁寧に教えているシオンにぽかんとするヒナ。
「おぉ! わかりやすいっすね」
と言って。チューキチが大声を出す。
「じゃあ、次コレ」
と今度はチューキチは違う問題を指さす。
「ああ、コレは…」
(あれ、案外。真面目に答えてくれるんだな)
ヒナはシオンを見て思った。
人見知りの激しいシオンだから。
チューキチを見て教えてくれないのではないかと思ったが。
ぶっきらぼうなりに。
丁寧に教えてくれる。
「シオンは数学、全国模試で1位取ったこともあるからねー。今のうちに何でも訊いたほうがいいよ」
エマが隣で得意げに答えた。
「おぉ! すげー」
チューキチがまた、大きな声を出す。
思った以上に。森兄妹と喋ってくれるので。
ヒナは良かったと心から安心した。
ま、ただ。
喋るのは初めてだから2人とも顔が怖いが…。
1時間ほどすると。
流石にくたびれたのか。
ノートに文字を書くペースがだんだん遅くなってきた。
「おい、ヒナ。お昼ご飯作ったけど」
ドア越しにホタルの声がする。
「お、みんな。ホタルがお昼ご飯作ってくれたって。行こう!」
ちょうど、だらけてきたところだったので。
ホタルの一声がちょうどよかった。
ダイニングルームに行くと。
テーブルの上に手巻き寿司の具材が置かれている。
「えー、昼から手巻き寿司!?」
てっきり麺類だろうと思っていたので。
テーブルいっぱいに手巻き寿司の具材が置かれているのを見てヒナは驚いた。
刺身類は勿論、
卵焼きにきゅうり、ツナマヨ、魚肉ソーセージ。
生姜焼きらしき肉類。
そして、酢飯。
正方形の海苔。
色とりどりの具材にエマは「わぁ」と声を漏らした。
「俺、皆の好き嫌いわかんないからさ。思い切って手巻き寿司にしてみた」
「ホタルさん、凄い~」
エマが高い声をあげる。
「さ、食べよう」
ホタルの一声で皆席につく。
「今、お吸い物用意するから」
ホタルはキッチンに向かった。
先ほどと同じように。
エマの隣にはシオンが座り。
向かい側にヒナとチューキチが座った。
「いただきます」
海苔を持って。
嬉しそうにエマが酢飯を乗せる。
「こんな豪華なご飯食べてるんすねー」
チューキチもうれしそうだ。
「え、チューキチ君。別にこんなの豪華じゃないよ」
「いーや。箕輪っちが羨ましいすよ」
そこに、ホタルがやってきて。
お吸い物を皆の前において。
ヒナの隣に座った。
「箕輪っちは凄いっすな」
「何が?」
ヒナがお吸い物をすすっていると。
チューキチは感心したように。
「だって、その年でこんな料理上手な彼氏さんと同棲しているんでしょ?」
ぶっ!
その一言を聴いて。
急にシオンがゲラゲラと笑い出した。
笑い出したと思えば今度はゲホゲホとむせ始めた。
「シオン、お茶飲みなよ」
エマがシオンに麦茶を渡す。
「なんすか、何で笑うんすか?」
チューキチがシオンに言うと。
今度はホタルがぶっと声を出して笑い出した。
「俺とヒナが恋人同士に見える?」
「え、違うんすか?」
きょとんとチューキチがホタルを見る。
ヒナはじぃーとホタルを見た。
「俺とヒナって結構、男女の兄妹の割には似ているほうだと思うんだけど…」
「うん。チューキチ君。ホタルは正真正銘、私の兄だよ」
「マジっすか? え、じゃあ血の繋がらない兄妹っすか」
ぶっ!
麦茶を飲んでいたシオンが咳き込んで。
ゲラゲラと笑い出した。
「面白すぎる…」
シオンが腹を抱えて笑っている。
「え、違うんすか。じゃあ腹違いの兄妹とか?」
「…あのねぇ、チューキチ君。昼ドラの見過ぎじゃない?」
最早、あきれ返ったヒナである。
「なんで、チューキチ君はヒナちゃんとホタルさんのこと兄妹じゃないって思ったの?」
エマが卵焼きときゅうりを巻いた手巻き寿司を食べながら言う。
「え、だってお兄さんのこと名前で呼んでいるから…」
「え、それだけの理由!?」
シオンとホタルは笑いのツボにはまったのか。
またゲラゲラと笑い出した。
「俺、姉貴がいるんすけど。絶対に名前で呼ぶなって言われてるんすよ」
「え、だからって名前で呼んだらカップルになるの?」
チューキチとヒナの噛み合わない会話を聴いて。
ただひたすらにシオンとホタルは笑う。
エマだけはきょとんとして。
「そういえば、確かに。ヒナちゃんってホタルさんのことお兄さんって呼ばないよね」
「え!? それ言うならエマだってシオン君のこと名前で呼んでるじゃない」
「うちは年子だから、そんなに年だって離れてないもの」
「え、うちも3つ違いだよ」
「1つと3つは違うじゃない」
エマの謎理論にヒナはフリーズする。
「俺が、ヒナに『お兄さん』って呼ぶなって言ったんだ」
「へえ、うちと逆なんすね」
チューキチがホタルの言葉に頷く。
「チューキチ君。このホタルはね。妹に凄いこと言ったからね」
「へー。何て言ったんすか?」
「私の口からは言いたくないよ。キモいんだって。この人」
うんざりした表情でヒナはホタルを見る。
ホタルは真顔になった。
「チューキチ君だっけ?」
「はい」
「たとえ、妹であってもね。ヒナは一人のレディーなわけよ」
「はい…」
「だから、俺はヒナを一人のレディーとして見るためにお兄さんとか妹っていう括りを捨てたわけさ」
「……」
うわっ。
真顔で何言ってんだろうと。
改めてヒナはドン引きをした。
「なるほど! さすがっすね」
感心するチューキチを見て。
今度はエマがぶっ! と笑い出した。
「ところで、ホタルって名前はホスト名か何かっすか?」
真顔で答えるチューキチに。
ただひたすら、笑いまくる一同であった。


