コイッペキ

元々、誰かと親密になろうとしなかった。
その美貌と、天才的頭脳で常に目立っていたエマ。
歩くだけで、周りの人が振り返るような人生をずっと送ってきた。
そんな彼女が、中学生の時。
何か大事件が起きた。

ヒナには教えようとはしない。
ユリナが言う通り、知られたくないのかもしれない。
まぁ、その事件が何なのかは知らないけど。
それがキッカケでエマの人嫌いが悪化したのは事実だ。

(もしや、シオン君も何かあったのかな)
ヒナは考える。
転校するまでのシオンは、よく喋る人だった。
優しくて毎日よく笑っていた。
それが、どうして。
あんな無表情になってしまったのだろう。
まだ、わかんない。
結局、わからない。
映画のときは元に戻ったみたいだったのに。
わかんなすぎる・・・

ピンポーン。
森家のインターホンを鳴らして。
ため息をついていると。
「はい」
と言って。
出てきたシオンにヒナは思わず「ひゃあ」と悲鳴をあげた。

てっきり、おばさんが出てくると思っていたので。
まさかのパジャマ姿のシオンが出てくるとは・・・
「あの、これ。エマに渡してください。じゃあ、お大事に」
うつろな目。
髪の毛は寝起きなのか寝ぐせがついていて。
真っ黒なパジャマ姿を見るのが恥ずかしい。

ヒナはプリントを押し付けると。
すぐさまに自分の家に帰った。
「ただいま」