コイッペキ

昼休みになって。
カバンから弁当を取り出す。
いつもは、エマと待ち合わせをして食べているので。
教室でお弁当を食べるのは初めてだ。
「あれ、箕輪っち今日は一人なの?」
不思議そうに近寄ってきたのはチューキチ君だ。
「ああ、うん。今日はね」
一人…というワードを聴いて。
急に恥ずかしくなるヒナ。
「じゃあ、俺も一緒に食べるよ」
と言って。
いきなり、チューキチがヒナの前の席から。
椅子を引っ張り出して。
ヒナの前に座った。
「え? チューキチ君いつも皆と食べてるんじゃ?」
「あ、大丈夫。おーい、俺。今日、箕輪っちと食べるから」
チューキチ君が黒板の前でご飯を食べていた男子集団に手を振る。
男子集団はチューキチを見て「そうか…」と言って。
急にニヤニヤと笑い出した。
その中で唯一、真顔でこっちを見ている男子がいた。
それが、田中君だとわかると。
ヒナは、
(うわー)
と、田中君を見ないようにした。

「いやあ。箕輪っちの弁当美味しそうだね」
チューキチは焼きそばパン片手にヒナの弁当をのぞき込む。
「そっかな?」
ヒナは首を傾げる。
「俺んちなんて、母ちゃん作ってくれないもんなー」
チューキチはパクパクと焼きそばパンを食べる。
「そういやさ、この前。ほんとすまんっす」
「この前って?」
「いや、なんかデートぽい感じで。俺邪魔しちゃったかなって」
急にチューキチがしょんぼりするので。
ヒナは慌てた。
「いや、そんなことないから。それより、チューキチ君ってあそこら辺に住んでるの?」
「俺んち? 俺んちは、えーと。バス停でいうと△△団地前っていうんだけど。わかるかな?」
「あ、知ってる!! うちから近いんだね!」
聞き覚えのあるバス停にヒナは思わず大きな声を出してしまう。
「そうなの? 箕輪っちの家は?」
「うちはね、□□坂前っていうバス停で、そこから」

意外とチューキチと近所だということがわかって。
話が盛り上がるヒナとチューキチであった。

チューキチを見ていると。
ヒナは、本当に良い奴だなと思ってしまう。
見た目は怖そうだと思ってしまったが。
話してみると、とても気さくだ。

人に対して、誰にだって平等に接しているし。
とにかく周りを見ている人だと思う。
クラスにうまく溶け込んでいて。
かといえ、調子に乗ることもなくて。
トド先生はちゃんと見抜いていたんだろうな、とヒナは思った。

チューキチは、近くで見ていて気づいたのだが。
カッコイイ方ではないかとヒナは思った。
大きな目、きりっとした眉毛。
顔が小さくて。
トレードマークのオレンジ頭。
背はそんなに高くはない(160cmくらい?)
でも、やさしい。
気さくで。
気遣いができて。
進学コースとあってか、頭がいいのだ。

(もてるんだろうなー)
ヒナはチューキチを見ながら思った。
と、さんざん。チューキチを誉めてみたが。
自分の心にはやはりシオンしかいない。
ホタルのアドバイスなんか当てにはならないと思ったけど。
シオン君以外の男子と話すことで。
気づくことがあるのかもしれないなー。

チューキチと昼休みは盛り上がって。
午後の授業が始まって。
気づけば、帰りのHRだ。
連絡事項を告げられて。
さあ、帰ろうとなったとき。
教室のドアが勢いよく開いた。

「たのもー。箕輪陽菜さんいますかー?」