コイッペキ

映画はあっという間に終わってしまった。
ヒナは、正直。映画を見るどころか緊張して何も内容が入ってこなかった。
映画館を出ると。
シオンはヒナを見た。
「お腹すいたから。久しぶりにあそこ行く?」
「あそこ?」
ヒナが首を傾げると。
シオンはスタスタと歩いていく。
ヒナは慌てて、シオンについていく。

駅から歩いて約5分ほど。
見覚えのある店に、ヒナは「わぁ!」と声を漏らした。
引っ越すまで、何度か来ていたハンバーガー屋さんだった。
「すごい…久しぶりだぁ」
店内に入って、ハンバーガーセットを注文して。
好きな席に座る。
好きな席…といっても。
いつも、一番奥の4人席に座っていた。

小さい頃から、この店に来ていた。
休みになると、たいていこの店に来ていた気がする。
ヒナの両親も、シオンの両親も共働きだったので。
お昼代を貰っては、皆でここでお昼を食べていた。

木目調のお洒落な店内で。
面と向かってシオンと話していると。
まるで、今までの無口なシオンは誰だったのだろうと思ってしまう。
今日のシオンはしっかりと喋っている。
「シオン君は、今でもここ来るの?」
「うん。エマと来るよ」
「そっかー。懐かしいね」
注文したハンバーガーセットが届いて。
食べていると。
だんだん、緊張感がほどけていく。

ふふと笑いながら。
アイスティーを一口飲んでいると。
シオンの後ろに女性が立った。
「あれぇ、もしかしてシオン君?」
ヒナは嫌な予感がした。
綺麗な女の人だった。
見せつけるような足の長さに目を奪われる。
自分と同い年かちょっと年上だろうか。
大きなまん丸の目に。
真っ赤な唇。
メープルシロップ色の髪の毛は肩まである。
真っ黒なワンピースを着て。
シオンに微笑みかけている。
「なになに? シオン君、彼女とデート?」
女の人がじっとヒナを見る。
ヒナはぺこっと頭をさげる。
シオンは女の人を見て、困ったような顔をした後。
「違うよ。この子は幼なじみ」
・・・オサナナジミ。
はっきりとシオンが答える。
「へー、そうなんだ! ふーん…」
そう言って。女の人はもう一度、ヒナを見た後。
「また、学校でねー。バイバイ」
と笑顔で去っていく。