コイッペキ

エマと見る予定だった映画は。
少女漫画原作のラブコメだ。
こんな、コッテコテの恋バナをシオン君は見て楽しいのだろうかと不安になってしまう。

お客さんはほぼ9割方女性だ。
真ん中の座席で。
キャラメルポップコーンを頬張りながら。
ヒナは恐る恐るシオンを見た。
てっきり、寝ているのかと思えば。
しっかりとスクリーンを見ている。
(やっぱり、これは夢なのかな)
ヒナは深呼吸をする。
ついこの間まで無視ばかりしていたシオンと、こんな至近距離で映画を見ている。
しかも、ラブコメだ。
絶対にシオンは興味がない内容だ。

シオンはアクション系やホラー系が好きだったはずだ。
昔。エマの部屋で少女漫画を見ながらキャーキャー言っていたら。
「何が、面白いのかわからん…」と言われたのを覚えている。

薄暗い空間の中。
それでも、シオンの横顔ははっきりと美しいとわかる。
(エマはどうして、こんなことをしたのだろう)
シオンの横顔をチラチラ見ながら。
ヒナは考えた。
100%お腹痛いのは仮病だろう。
最初から来る気がなかったということだ。

(まぁ、エマの気遣いのお陰でこの時間があるんだもんね)
思わず、にやけてしまうヒナである。