コイッペキ

日曜日。
てっきり、家の前で待ち合わせするのかと思っていたら。
エマが「ちょっと寄るところがあるから。映画館で待ち合わせしよー」と言ったので。
ヒナは、映画館でエマを待っていた。

ポップコーンの香りで溢れる映画館。
休日のせいか、人が多い。
待ち合わせ時間の5分前には到着して。
周りをキョロキョロ見回していたヒナだったが。
時間を過ぎても現れないエマに「どうしたんだろう」と。
スマホを取り出した。
エマからは何の連絡がない。

周りをもう一度見回すが。
エマの姿はない。
親子連れや、カップル。友達同士で来ている人たち。
一人、ぽつんと立っているヒナ…。
もう一度、スマホを見る。
すると、ヒナの肩をトントンと誰かが叩いた。
「エマ?」
振り返ると。
そこに立っていたのは…
「シオン君?」
ヒナは飛び跳ねた。
不機嫌そうにシオンが立っているのだ。
黒いTシャツにジーパン姿。
眼鏡はかけてない。
整ったカオを見て。
近くにいた女子集団が「あの人、カッコよくない?」と騒ぐ。
「エマ、お腹痛くなって来られないって」
「え・・・そうなの」
シオンの言葉に。
ヒナはショックを受ける。
「シオン君、わざわざ言いに来てくれたの? ありがとう」
ショックを受けながらも。
シオンのやさしさに感謝するヒナ。
エマと映画を見られないのはショックだけれど。
シオン君と喋れただけ、良しとしよう。

そんな、ヒナを見て。
明らかにシオンは困惑した表情を浮かべた。
「映画見れないのは残念だけど。お腹痛いのは仕方ないよね。シオン君、ほんとわざわざ伝えに来てくれてありがとう」
もう一度、ヒナがお礼を言う。
「あのさ…」
「ん?」
ヒナがシオンを見ると。
シオンは目をそらした。
「エマが、代わりに俺が映画見て来いって」
「はい?」
すると。
ヒナのスマホがブブッと鳴って。
メッセージを見ると。
エマから「シオンとのデート楽しんでね!」という恐ろしい内容だった。

「え…?」
状況が飲み込めないヒナ。
ヒナはシオンを見ると。
「時間がないから、早くチケット発券して行こう。ヒナちゃん」
そう言って。
シオンはヒナの腕をつかんだ。
(これは夢ですか)
ヒナはいきなり起きた出来事に恐怖を感じた。