コイッペキ

「ヒナちゃん、何だかやつれてない?」
朝、フラつくヒナを見て。
心配そうに見つめるエマ。
その隣で相変わらず無表情でシオンがヒナを見ている。
「ちょっと、ダイエット中で」
「えー、ヒナちゃん。ただでさえガリガリなんだから、ちゃんと食べなきゃダメだよ」
(エマにだけは、言われたくない―)
ヒナは心の中で泣いた。
本当はダイエットなんかしていない。
食欲がなくなったのだ。
お陰で5kg体重が落ちた。
立て続けに5人もの男子にフラれて、落ち込んでいるだけだ。

「そういえば、彼氏と別れたの?」
「へ?」
いきなり、エマが言うので。
ヒナは倒れそうになる。
慌てて、手すりにつかまる。
「別れて正解だと思うよー。ヒナちゃんとあの人。合わないもん」
「……」
何故だろう。
本気でヒナは、エマのことが嫌いだと思った。
そして。
もとはといえば、シオン君が自分に対して冷たくするからじゃないかと思った。

どうして、自分はこの兄妹に振り回されなきゃいけないのか。
泣きそうになるけど。
泣くわけにはいかない。

エマがヒナの元カレの話をしても。
シオンは興味なさそうに、窓の外を眺めている。
そんなシオンを見て。
ヒナは絶望した。
「あ、そうだ。ヒナちゃん。今度、映画行こうよ」
「えいが…?」
「どうせ、彼氏と別れてヒナちゃんも土日は暇でしょ」
相変わらず、はっきりと物事を言うエマに。
更に落ち込むヒナ。

バスを降りて。
3人は並んで学校へと歩く。
「今度の日曜日さ、映画行こうよ。お洒落してさ。映画見てショッピングすれば、嫌なことも忘れちゃうよ」
ニッコリとエマが笑った。
エマなりの気遣いだろう。
嫌なことの原因は、あなたですけどね。
と、心の中で呟くヒナであったが。
エマの誘いが嬉しかった。