コイッペキ

もしかして。
嫌われているのかもしれない。

一番、考えたくもなかった思いが脳裏をよぎった。

ヒナは自分の部屋に戻るなり「わー」と叫んだ。
そして、スマホを取り出して。
エマに連絡しようとした。
が…。
「言えない…」
机に突っ伏す。
相談して、もしエマに「そうだよ。シオンはヒナちゃんのこと…」なんて言われた日には。
もう二度と立ち直れない。
エマは言葉をオブラートになんか包まない。
直球で伝えてくるのだ。

3年ぶりに再会してから。
シオン君は、自分にだけよそよそしい。
今日が良い例だ。
せめて、一緒に帰れないなら無理だって言ってほしいよ。
バカみたい。
恥ずかしい…。

「……」
嫌われるようなことをしただろうか?
ヒナは一生懸命考えるが。
何も浮かばない。

「ヒナ、夕飯だぞー」
ドア越しに聞こえたホタルの声を聴いて。
のろのろと制服からジャージに着替える。
落ち込んでいても、お腹は減るものだ。

ダイニングルームに行くと。
テーブルの上に並べられていたのは肉じゃがだった。
ため息をついて。
ヒナは「いただきます」と言う。
「なんだよ、食欲ないのかよ」
ヒナを見てホタルは眉間にしわを寄せる。
「せっかく、作ったのに」
「違うよ。落ち込んでるだけ」
そう言って。ヒナは口いっぱいにご飯を放り込んだ。
「おまえのことだから、100%シオンのことだろ」
「さすが、ホタルだね」
そう言って。
ヒナとホタルは同時に、肉じゃがに箸を運ぶ。

桜は散ってしまった。
窓を開けているのだろうか。
奥の部屋から、ふんわりと風が入り込んでくる。
「ねぇ、ホタル。シオン君が何考えているのかわかんない」
正直に胸の内を打ち明けると。
ホタルは箸を置いた。
「ヒナは、もう少し男の気持ちがわかっていいのかもな」
「…どういうこと?」
「おまえは、シオン以外の男とも喋ったほうがいいってことだ」
「うん?」
その時のホタルのアドバイスにヒナは首をかしげるばかりであった。