朝一の桐山さんはとても眩しい。思わず目を細めたくなる。先日の黒のエプロンも似合っていたが、今日のデニム生地のエプロンも良く似合っている。加えて爽やかさも増しているような気がした。

言っておくが、この前少し仲良くなれたからであって、別に好きとかそういう恋愛感情で言っているわけではない。

何たって私の趣味は人間観察なのだから。

「こんにちは桐山さん。朝早く目覚めてしまって来ちゃいました」
「そうなんですね。・・・でも、今日は残念ながら祖父はいないんです」

「みたいですね」と店内をキョロキョロ見回す。せっかく来たんだ。帰る気なんてさらさらなくて、朝ごはんをかねてモーニングでも食べようと席を探す。店内に入る前に見たボードにモーニング限定メニューの内容とイラストを見てきたのだ。卵サンドとシーザーサラダにコーヒーがセットで590円。カウンターはやめて、2人がけのテーブルに座ろうか。

そう思っていた時だった。

「お、噂の橋本ちゃん?」
「・・・ハ、ハシモトちゃん?」

私の名字を呼ぶ声が聞こえた。桐山さんを通り越したその奥から。少し体をずらすと、こちらに体ごと向けていた例の金髪男とばちりと目が合う。すると彼は、友達かのように手を振ってきた。誰だ、と桐山さんへ視線を向けると彼は彼で困ったように手を額に当てていた。

「由希、橋本さんが困っているでしょう」
「橋本ちゃん、こっちに座りなよ」

ため息をこぼす桐山さんとは裏腹に、ポンポンと楽しそうに自身の隣の席を叩く男。そこは私のいつもの特等席だった。行こうかどうしようかと迷っていると、桐山さんが困ったような微笑で「良ければ、彼の隣にどうぞ」と金髪男の隣の席へ促すように通路をあける。戸惑いながらも、せっかく桐山さんがそう言うのだから座らせてもらうことにした。

恐る恐る近づくと、金髪男ーーー“ユキ”と呼ばれていた彼はにたりと面白いものを見るかのように笑う。その視線を浴びたまま、彼の隣にゆっくりと腰をおろした。いつもは落ち着くこの一番窓際の席も、今日は外も明るいせいか、落ち着かずにそわそわしてしまう。

「えっと、桐山さんのお知り合い、で合ってますか?」
「そうそう。オトモダチの早乙女由希です。ね、水樹」

そう言って同意を求めるように声をかけた先には、メニューを片手に桐山さんがこちらへ歩いてきていた。どうやら私のために持って来てくれたらしい。一言お礼を告げて、それを受け取る。