「いや本当だって。ただ、それを言葉にしないと、彼はきっと不安だったんだろうね」
「言葉足らずだって、重々承知しているよ」
「まあ、他の子に靡いた彼も良くないんだけど」

さっきから水樹くんが何が言いたいのかが分からない。どう話を持って行こうとしているのだろう。彼女がいる時点で他の子を好きになったのかと腹を立てる事柄には間違い無いのだが、その元々の原因は私なのだ。ただ言葉足らずだって自覚はあっても、幼き頃からの性格はそう簡単には直すことはできない。

「別に奈央ちゃんが悪いっていうわけじゃ無いよ。直した方がいいとか、そういう話じゃ無い」
「どういう意味?」

回りくどい言葉をわざと選んでいるようにも見えた水樹くんを少し見上げる形になる。そして訳が分からず眉をひそめてその次の言葉を待った。

ひゅっと風が吹き、私たちの間を通り抜ける。思わず目を閉じ、次に開けた時、彼のその美しい瞳に捕らえられ視線が外せなくなる。そして水樹くんは言った。

「僕なら、そういうところも全部ひっくるめて好きになれるのに」