最後の旅立ちの日になっても、


心臓はなお動き続ける。


肺が空気を送り出し、


声帯を振動させて声をだし、


口でそっと言葉を乗せて、


最後の別れを言うために


心臓は動き続ける。


やがて、最後の仕事を終えると、


鼓動は少しずつゆっくりになっていく。


私の人生が短かったか長かったかは、


分からない。


しかし、私は生きていた。


心臓の鼓動と共に。


この世に生まれ出て、


母に抱き締められている時も、


公園で無邪気に走り回っている時も、


友達と喧嘩をした時も、


初めて恋をした時も、


辛い失恋をした時も、そう。



その一瞬一瞬を刻むように、


心臓は動いていた。



心臓の動きに呼応するように、


私の呼吸は浅くなっていく。



心臓は、"停止"へ向かっている。



私も、"死"へ向かっている。



ただ、それだけ。



それだけのこと。



心臓が止まったら、



私は死ぬ。








-------------ただ、それだけのことだ。







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