夏樹くんを見ると思いのほか、距離が近くてびっくりした。
「そ、そうなの」
買うのは諦めようと思って、目をそらすようにしながら、手に持っていた物を棚に戻した。
夏樹くんが近くに居ると、何故かドキドキしてしまう。
緊張とはまた違った感じだけど、嫌な気持ちでは無かった。
「ほ、ほら、夏樹くんそろそろ仕事にはいるよ」
私は、誤魔化すように夏樹くんを急かす。
「はい!やってみます」
夏樹くんは真面目な顔に変わって、私から離れ店員さんに声をかけに行った。
「すみません~、旅行代理店で働いています、黒瀬と申しますーー」
「柏木と申します」
「少々よろしいでしょうか?」
大丈夫だとは思うけれど、一応私も後ろについて行った。
「はい?」
「この度、近くの旅館をうちのお店で紹介させて頂くことになったのですが、その際にこちらのお店も紹介させて貰うことは可能でしょうか?」
夏樹くん、堂々と言えている。
「具体的にはどんな風に紹介されるのでしょうか?」



