言ってしまったと言うより、思っていた言葉が気がついたら口に出ていた......。
すると、さっきまで固まっていた夏樹くんが口を開く。
「あ、あの......!」
緊張からか、いつもの堂々とした感じが抜けている。
私と女将さんの目線の先には、少し引き攣った顔の夏樹くん......。
大丈夫だろうか......?
そんな夏樹くんを見た女将さんはまた優しく微笑んだ。
「なんでしょうか?」
「一人一人に合わせると言っていましたが、好みなどは予約の時に聞くんですか?」
夏樹くんが言ったのは、私が勝手にそうだと思っていた質問だった。聞くまでもないーー、私はそう思っていたのだけれど......。
「もちろん、予約の時に伺いますがそれだけでは足りません......。我が旅館には今までの宿泊者様の記録が残っていますので、そちらも参考に使って準備をしています」
「あの、記録ということは、今まで泊まった方の好みなどが全部残っている......ということでしょうか?」



