「女将さんは、この旅館に来た人にどう思って帰ってもらいたいですか?」
「もちろん、楽しかったと思ってもらいたいです。
ただ、楽しいと言っても色々あると思うんです」
「色々......ですか?」
「はい。人それぞれ楽しいと思う視点は違います。ここは、来た人の記憶に残るような、そんな旅館にしていきたいと思っています」
たしかに、人の感情は人それぞれだ。
楽しかったと思うのも、良い旅行になったと思うのも一人一人思う場所は違う。
都内のビジネスホテルや、大手の旅館では誰にでも同じ接客......マニュアル通りの対応しかない。
それが、その人に合わせた対応をしたら......。
間違いなくその人の心に残ると思う。
私だったら、そんな旅館はまた来ようと思うはず。
「凄いですね。私だったらまた来たいと思うと思います!」
「ふふっ......ありがとうございます」
思わず言ってしまった私に女将さんは優しい笑顔で答えた。



