後輩くんは溺愛を隠せない



私は普段の仕事用のバックだけで、身軽になる。



「ありがとう」



たしかに、キャリーケースを引っ張って、満員電車に乗るのは私には大変だろう。


だから、この提案は素直にお願いすることにした。



「まもなく電車が参ります。黄色い線までお下がり下さい~」



そのアナウンスがなった数秒後には電車がホームに入ってくる。



「紗知先輩、俺から離れないで下さいね?」


「う、うん」



意気込んで言う夏樹くんは、まるで戦場にでも行くかのようだ。


真剣なその顔に、ドキッとする。


1人だと絶対押しつぶされる予感しかしないので、離れないでおこうーー。


電車のドアが開いた途端に、人の波が押し寄せる。


夏樹くんと離れないよう、ついて行きながら私達は入口付近の手すり近くを確保した。


夏樹くんは私を守るように前に立つ。


その距離は1センチも無かった。


ふわっと香る柔軟剤のいい匂いにいつの間にかドキドキと胸の鼓動が速まる。



「紗知先輩、大丈夫ですか?」