私にとって、夏樹くんとの満員電車は覚悟が必要だった。
何せ、距離が近いのだ。
抱きしめられているように感じてドキドキしてしまうのだから......。
実際は、ただ前に立ってくれているだけなのだけれど......。
私が覚悟を決めていると、夏樹くんは私のキャリーケースをサッと奪い取った。
「えっ?夏樹くん?」
「この満員じゃ大変そうなんで、俺が持ちますね」
夏樹くんだって、大きなボストンバックを持っているから、両方持つとなると大変だろう。
「それに、俺の荷物上に置かせてもらえると助かるので」
戸惑っている私に、夏樹くんは自分のバックをキャリーケースの上に置いてみせた。
キャリーケースよりも横幅のあるバックなので、バランス取るのが大変そう......。
「でもーー」
「紗知先輩、こういう時は男に任せてください!」
持たせるのは悪い気がするけれど、無理に返してもらうことも出来ず、結局持ってもらうことになった。



