「…その相談にのったんですか」
「…うん。彼氏と上手くいってないって相談で。最終的には別れたって言ってた」
「…それで、その後会いたいって言われたんですか」
そう言うと「…うん」と返ってきた。
優しい如月さんだもん。
「2回くらい会って、よりを戻したいって言われた」
ぱっと顔を上げる。
私に内緒で女の人と会って、よりを戻したいって…。
「おれは、」
「もういいです」
気付いたら拒絶が口から出ていた。
ぽつりと涙がスカートに滲んで、消えていく。
「なつきちゃ…」
「もういいですっ!」
言いかけた言葉を遮る。
一度零れた涙は簡単にとまってくれない。
いくら拭っても溢れ出てきて。
「…別れてください」
無意識にそんな言葉が口から出ていた。
「夏希ちゃん…」
「私と別れてください」
違う。別れたいわけじゃないのに。
ちゃんと話し合って仲直りしたかったのに。
「…おれは、夏希ちゃんと別れたいなんて思わない」
「うそ。子供って思ってる」
「思ってない」
じゃあ、なんで。
「じゃあなんで…。3ヶ月も付き合ってるのに全然キスもしてくれないし、触れてもくれないのはなんでですかっ」
ずっと不安だった。
3ヶ月くらい付き合ってるのに、キスは1度だけ。
たぶん私のことが好きじゃないんだと思ったことは何度もある。
口から不満が堰を切ったように溢れ出す。
「元カノさんと私ってまるでタイプ違うじゃないですか。すっごく綺麗で、美人さんで」
如月さんは黙ったまま。
怖くて顔が見られない。
「どうせ私は、」
やだ。
「わたし、は…」
お遊びだったんでしょう…とは口に出せなかった。
強引に上を向かされて、
気がついたら目の前に如月さんの顔があって、
口を塞がれていた。

