「ちょっと、お兄ちゃん」
「紙袋は遥人に預けてきたから」
車に乗り込みながら、嫌な笑顔でそう言われる。
最悪、油断してた…と後悔するが時すでに遅し。
お兄ちゃんを睨むも素知らぬ顔で平然とスマホをいじり出した。
どうしようかと悩む。
取りに行きたいが、如月さんに会うのは抵抗がある。
「なつちゃん、行ってきた方がいいよ」
うーんと悩みこんでいる私にそう諭すゆきちゃん。
優しく言われ、む、となるも言い返せない。
このまま自然消滅なんて形になったら後悔する。
でも、いざ行こうとすると足が竦んでしまう。
けど…。
「大丈夫だよ。遥人くん、1週間も会えなくて寂しいと思うよ」
「…うん」
そうしか言い返せなくて、思わず俯いた。
私だって寂しいし…。
しばらくして…。
「…いってくる」
後悔したくないし、先延ばしにもしたくない。
せっかく機会を作ってくれたんだもん。
これを逃したら、また躊躇しちゃう。
車のドアに手をかけ、車を降りる。
「お兄ちゃんたち、ここで待っててくれる?」
「おう」
「ゆきちゃん、もしも振られたら慰めてくれる?」
「うん。その心配はないと思うけどね」
苦笑された。
…もしもの話だから。
もう一度、いってくると言って公園に向かう。
…なんて言えばいい?
避けていてごめんなさい?
別れてって言われたらどうしよう。
ぐるぐるとネガティブ思考が頭の中をまわって、軽くパニック状態になる。
なんやかんや考えているともう公園の入口で。
影に隠れながら公園内を伺う。
すぐブランコの近くにあるベンチに如月さんを見つけて、ドキッとなってしまう。
隣にはお兄ちゃんが持っていった紙袋。
どうしよう。
いざ、目の前にすると手に汗を握る。
でも、戻っちゃだめ。
私は一度深く深呼吸をして、公園に足を踏み入れた。

