「遥人が浮気ぃ!?まじでぇ?」
事情を聞くやいなや叫ぶお兄ちゃん。
お兄ちゃん、ゆきちゃん、如月さんは高校からの同級生でお兄ちゃんが如月さんを家に連れてきた時に出会った。
「お兄ちゃん、うるさい」
耳元で叫ばれ、耳がキンキンする。
「それ、勘違いとか見間違いとかじゃなくて?」
「…確かに見たもん。その如月さんと綺麗な女の人が…キスしてたとこ」
そう言うとまた思い出してしまって。
泣き出した私の背中をゆきちゃんがさすってくれる。
「まさくん、遥人くんからなんか連絡あった?」
「いや、ねぇな。ゆきは?」
「私も無いねぇ」
「…あいつ1回殴っとくか」
そう物騒なことを言うもんだから、「やめて」と返す。
「夏希には当たり前だけど連絡きてるだろ?」
そう聞かれ、スマホの電源をつける。
「うわぁ」
「通知すごいね」
ホーム画面に着信通知とメッセージの通知がズラッと並んでいる。
「電話かけなおさねぇの?」
「別れ話だったらやだ」
そう言って小さく体育座りでうずくまる。
「俺から電話かけようか?」
「…やめて」
お兄ちゃんがかけると拗れそうで断った。
「…でも、ちゃんと早めに話した方がいいよ?」
ゆきちゃんに優しくそう言われる。
「…うん」
心の中では分かってるけど勇気が出なくて、どんどん先送りにしてしまう気がする。
でも今は気持ちの整理が出来てなくて。
如月さんは大人だからこのまま話したら面倒臭いとか子供とか思われそうで怖い。
ゆきちゃんはクッションを抱きしめて眉を寄せ、スマホを眺める私の頭を撫でて微笑んだ。
「ご飯作るね。今日は、ハンバーグだよー」
ハンバーグって言葉にパッと顔を上げる。
「なつちゃん、手伝ってくれる?」
「うん」
いつも如月さんのアパートで作ってついでに食べてたから、この家で食べるのは久しぶりな気がする。
如月さんのことが頭を掠めるけど、ゆきちゃんからエプロンを借りて、晩御飯を作ることに専念した。

