「あたし、何で相原くんに話しちゃったんだろ。秘密にしなきゃいけないことなのに……」

笑顔が消え、花山さんはその場にペタリと座り込む。その目からは今にも涙がこぼれ落ちそうだった。僕は、花山さんと同じようにしゃがむ。

「話してくれてありがとう。僕は花山さんの秘密を言ったりはしない。だって、僕は君のことが好きだから!」

花山さんの目をまっすぐに見つめる。僕の中で花山さんの存在はとても大きくて、一緒にいたいと思ったんだ。

「あたし、こんなのだけどいいの?」

不安げに花山さんはうつむく。僕は「いいんだよ!だって花山さんのことが、本当に好きなんだ」と微笑んだ。

「……ありがとう」

顔を上げた時、花山さんの目から涙がこぼれ落ちていた。その優しい微笑みに、僕の目の前の世界がこんなにも綺麗だったっけと驚くほど煌めいて、眩しかった。

「花山さんをモデルにした人物の小説を書いてもいいかな?」

僕がそう訊ねると、花山さんは照れくさそうにはにかみながら頷いてくれた。

想いが通じ合った刹那、僕たちの切ない恋は始まったんだ。