最初で最後の愛の話

「よかったら、一口食べる?」

僕がそう言うと、写真を撮り終えた愛が「本当!?嬉しい!!」と明るい笑顔を見せる。

「はい、どうぞ」

僕はフォークでパリブレストを刺し、愛の口もとに持っていった。愛は恥ずかしがりながらも食べる。

「おいしい!」

頰を緩ませる愛に、僕は訊ねる。

「今から、僕の行きたい場所に行ってもいいかな?」

愛はコクリと頷いた。



僕が愛を連れて行ったのは、パリの有名な観光地でもどこかのお店でもない。

「ここって……教会?」

愛がジッとと厳かな雰囲気の建物を見つめる。ステンドグラスが美しい。僕は愛に言った。

「ここで今から二人だけの結婚式を挙げよう」

結婚式は女性にとって大切なもの、と色んな人から言われた。僕も愛のドレス姿を見たい。そう思ったからサプライズで用意することにしたんだ。

「いいの?」

「うん。愛のドレス姿、見せて」

「うん!」

愛は嬉しそうに微笑む。すぐに式の準備をした。僕は白いタキシードに着替え、祭壇の前に立つ。