最初で最後の愛の話

「だからこそ、一緒にいたいんだ」

愛の口から嗚咽が漏れて、僕は愛の背中を優しくさする。愛がここまで大泣きしたのは、初めて大喧嘩をした時以来だ。

「僕の家族になってくれる?」

僕がそう訊ねると、「……はい」と泣きながら愛は言ってくれた。

「ありがとう」

泣き続ける愛に、優しく僕はキスをする。その日、僕らは未来を誓った。



大学を卒業してすぐ、僕と愛は結婚した。結婚式は挙げず、そのお金は新婚旅行に使うことにしたんだ。

「ヨーロッパに行きたいから、結婚式はしなくていいよ」

愛はそう言い、僕が「いいの?」と何度訊いても迷うことはなかった。

僕たちが結婚することに、愛の両親は最初は反対していた。愛がウェルナー症候群だからと。しかし、僕が説得して結婚することができた。ちなみに、僕の両親はウェルナー症候群ということに驚いてはいたものの、「あんたが選んだ人なら」と認めてくれた。

愛は花山愛から相原愛に変わり、二人で浮かれながら空港へ向かう。今からヨーロッパをあちこち巡る旅が始まるんだ。