しかし、ドリキンはワザとauスープラをブロックせず、先へと行かした。温まりにくいレーシングミディアムタイヤでは、TI英田の1コーナーでは間違いなくスピンしてしまうからだ。
後ろから様子を伺うように、少しウェービングしながら追いかける。
そして、バックストレート手前の90°コーナー、auスープラがスピンした。チーム国光NSXは1ポジションアップしたが、何よりauがスピンしてしまって、グラベルに突っ込んだので、コースは勿論イエローコーション。追い越し禁止の中で、ジワジワと3番手、ザナビィヒロトGTRに差を詰める金橋。
「これ行けるかなぁ〜？」金橋がぶつりと独り言を呟いた。約一周程でイエローコーションは解除され、全台本気で走り出した。その時、カストロールスープラが二番手に降り、ペンズオイルがトップに躍り出たとの無線が入る。まだアウトラップでそこまで気にする必要は無いが、一戦目から大手勢の1-3位を奪われるのは何か嫌だと思ったのだろう。金橋は最も曲がりやすく、最もタイヤライフが削れやすい、スタイビライザーを前後共にソフトへとモードチェンジをした。追い詰めるつもりだ。