ドリキンは一瞬耳を疑ったが、もう一度国光に
「ピットインするぞ!給油に、ドライバーチェンジ、タイヤ交換もだ!」
大して音量のデカく無い無線の筈なのに、耳をつんざくような感じだ。1コーナーで飛び込んだレイブリッグ彰を追っかけて無理して一位になったが、無理をしたお陰でタイヤライフはゴリゴリ削られ、普通なら約10周しか持たないであろうソフトタイヤで、20周も走っている。それでもう異常と判断した国光が、ピットインの指示を出したのだ。2位のカストロールスープラを狩るエリック・コーマスとの差は約5秒。コーマスは前々周でピットインを済ましており、アウトラップ明けの周ではザナビィヒロトGTRのファステストを更新している。ジワジワと近づいてくるコーマス、逃げるドリキン。戦いは精神戦の領域へと突入した。