朝。

8時50分。

私は屋上にいた。

あの、窓際の席はもう座らないことにした。

さよなら私の初恋。

照れくさくて、あったかい窓際の恋。

ひゅうと風が吹いたら飛んで行ってしまったその恋は、

もう戻ることはないだろう。







_ガチャン




ドアが開いた。




「あ。また来てたの、先輩」



「大崎君」

座んなよ、と私を隣に座らせた。

「なに。またなんか悩み?」



彼はちらと私の顔を覗き込んだ。


「別に、暇だなって」


「ふーん。…………じゃあ、俺の悩み聞いてよ。」




「あんたに悩みなんか、あるの???」

こんなに綺麗な顔をした、男の子に悩みなんてあるのだろうか。
勉強が出来ないとか?

「あるよ……」



「なに?」



「やっぱり辞めようかなぁ。」



「え!?気になるんだけど。

そこまで言ったなら話しなさいよ。」



「ウーン。わかったよ……」


彼は急に真っ赤になった。
そのうえあたふたしている。


その意味深な行動に彼を凝視する。


「そんな見ないで。」

彼は恥ずかしそうに横を向いた。

「ごめん。ってか早く。」


私は何だか気になって仕方がなかった。
















「…………………………すきなこができた。」




彼はそう言った。

聞こえるか聞こえないかぐらいの声で。


さっきまで平気でカッコつけてた彼は

まるで別人みたいに照れている。

その姿を見て、



「なんか、かわいいね。」

そう言ってしまった。

すると彼はガックリと落ち込んだあげく

拗ねてしまった。


いつもクールなイメージがあった彼が

こんなに面白い人だったなんて……


そのギャップに笑ってしまう。

「ちょっと笑わないで先輩。」




ふふふ。



「じゃ告らないとね。
振られたらなぐさめてやるよ。」


にっと笑ってそう言った。 


彼は呆れた顔で、「以外とバカだね先輩」
と言った。だから、軽く殴った。















__よく分からないけど、



また、新しい何かが始まろうとしている。



それもきっとまた、暖かいものだろう。


私は来るべき未来をただ待つだけ。

時に悲しいことも、辛いこともあるだろう。


それでも、








きっとまた乗り越えていけるだろう。










__Fin


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閲覧ありがとうございました。