「……………………なんでだよぅ……………。」

俺の苦しみなんて………誰も解らないのか?

結局一人なんだと、またトラウマに捕らわれた時。

「……………彰人、帰りたいなら帰りなさい。
逃げるなら、逃げれば良い。
けど
それなら、大事な寧々はあげれないからね。
…………………この間言ったでしょう?
私もここにいるみんなも、寧々と同じだけ貴方が可愛いと。
その人達が、貴方を苦しめると思う?
だから、信じられないなら帰りなさい。
二人とも、手を放してやりなさい。」

…………………………………………。

悔しいが、この人の言う通りだ。

母親だというだけあって………

真剣に俺に向き合ってくれている。

兄貴達が………咲が……。

寧々が俺を苦しめる訳はない。

「……………お邪魔します。」

靴を脱ぐ俺に、ホッと息を吐く寧々が視界に入った。

何故、親父がここにいるのかは解らない。

けど

この祝いの場に、敢えて呼んだ意味はあるはずだ。

だったら、キチンと聞いて向き合わないといけない。

例え腹が立つような内容だとしても

逃げては始まらないからな。

腹をくくり

咲に促されるまま奥に進む。

「………………彰人君…………ごめんね。」

ソッと寄り添い謝る寧々に

「帰ったら、覚えてろよ。」と笑うと

小さく微笑んだ。