笑顔の行方

とは言っても…………。

こうなってしまっては…………仕方がない。

身寄りがなくなった寧々を

このまま放り出すことも出来ない。

それこそ、何処の馬の骨とも分からない男に

みすみすくれてやる訳にもいかない。

「寧々、こっちにおいで。」

とうとう、俺が諦める形で決着がついた。

「おばさんの無茶な行動で、お前を3週間預かることにした。
これは、あくまで仕方ない処置だ。
決して俺が喜んで決めた訳ではないと…………………………。
あぁ~
寧々??
寧々ちゃん??
寧~々!
どうした??
何処か痛いところが………………」

俺の心配を他所に。

泣きながら怒ると言う、器用な行動を起こす寧々。

「彰人君のバカ!!!!!」

一言怒鳴ると

一目散に玄関に飛び出した。

「寧々!!!」

慌てる俺は、急いで追いかけようとして……………

ぶるっ。

うぅ~、寒い!!!

今は2月。

真冬だ。

………………アイツ…………薄着だったよな??

直ぐに持ってきた荷物を漁り

コートと手袋。

それから…………

俺が贈った、10年前のカシミヤのマフラーを握って

再び追いかけた。

…………………寧々の奴。

まだこのマフラーを使ってたんだ……………………。

このマフラーは

まだ寧々が幼い頃。

実の母親と施設と洋介のウチを行ったり来たりしていた頃に

贈った物だ。

母親の元に何度目かの引き渡しの時

親子二人での生活がキチンと出来るか、一度施設の人が確認する為

施設に向かうとき。

『これは彰人君に寧々が貰ったの~!!!』と泣き叫んだ品物だ。

普段大人しく、聞き分けの良い寧々が

『施設には、贅沢品を持って行かれない』と言われ

大人達に向かって、初めて駄々を捏ねて見せた。