「寧々、兄貴達が呼んでるぞ。
あっ、こらっ………走るな!」

大きなお腹をつき出して、兄貴達の元へ急ごうとする寧々。

ちょっと目を離すと無茶をする。



『笹山寧々』になって三年。

ようやく念願の仕事につく。

大学二年の時に、籍を入れ結婚した。

卒業して直ぐに老人ホームの建設がほぼ終わり

後は、周辺の街が完成すればいよいよ勤め始める予定だった。

計画が狂ったのは…………

今から半年前、俺と寧々の間に子供が出来たからだ。

結婚して二年たち、卒業もしてる。

普通だったら待望の赤ん坊に、周りはみんな大騒ぎで喜んでくれる。

もちろん…………寧々の子供だと……喜んでくれた。

ただ、タイミングの悪さに………

笑顔の中に戸惑いが見え隠れしていた。

寧々に何も言えない大人達は……

全ての責任を俺に当て、ケチョンケチョンに文句を言われた。

そうしていよいよ仕事が始まる。

俺としては

母親になる今、仕事は他の人に任せて子供と向き合って欲しいと思う。

3歳で母親と死別した俺からしたら………

無理をして

子供の母親………

俺の愛する奥さんを、失くしはしないかと不安なんだ。

本音を言えば…………家庭に入って欲しい。

けど………

学生の頃から夢見て頑張ってる姿を

誰よりも近くで見てきたから………反対出来ない。

せっかく夢を叶えたんだから。