桜の咲く頃……… 君を想う

「出来た!
美味しそうでしょう。
桜ちゃんが一人で焼いたのよ。」

少し焦げ目の目立つ餃子が………

何処で食べた物より美味しかった。

「お父さん、お母さん。
ありがとうございます。」

桜はやっぱり泣いてばかりだったけど…………。

「明日は帰るんでしょ?」

少し寂しそうに明日の予定を聞くお袋。

「あぁ。
明後日から、俺も桜も仕事だから。
朝早く帰る。」

「………………そう。」

俺と3歳離れた妹の五月が、田舎を出て以来

帰る度にこの顔を見せる。

悪いとは思うが……………ここだと仕事がないから仕方がない。

「先生、お父さん達を家に来て貰ったらダメ?」

スッカリ親父達を気に入ってくれた桜も、離れがたいらしく

さっきもそう聞かれた。

………………………………う~ん。

気に入ってくれたのは嬉しいが………………

せっかく桜を手に入れ、二人で過ごせる時間も増えるのに。

何も親父達と一緒に過ごさなくても………………。

渋る俺に

「お願いします!」と可愛い目で訴える。

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「だったら、俺のお願いを一つ聞いてくれる?」

純心な桜は、何も疑う事なく二つ返事で頷く。

『下心があるなんて、想像もしてないんだろうな。』

「約束だよ!」

念押しして

「親父達も一緒に来る?
たまには泊まりにおいで。」と言ってみた。

「お仕事がお休みの時に、色々ご案内します。」

桜が有休願いを出すつもりだと、想像がつく。

そんなにしてまで、俺の親を大事にしてくれる彼女が愛しい。