桜の咲く頃……… 君を想う

「あの……木下桜です。
よろしくお願いいたします。」

ちょこんと頭を下げる桜に

「亨の親父です。
桜ちゃん、遠慮しなくて良いからね。
亨の親父は、桜ちゃんの父親でもあるんだから。
実家で遠慮は可笑しいだろう。
足が痺れるから、崩して崩して。」とデレデレだ。

「はい、ありがとうございます。
……………あの……お父さん。
お仏壇にご挨拶させてもらっても…………良いですか?」

「お父さん…………。
あぁ~良いねぇ。
仏壇にも挨拶してくれるのかい?
桜ちゃんはホントに良い子だねぇ~
母さん、用意してやって。」

スッカリ桜にメロメロな親父とお袋。

………………良かった。

その後、庭のヤギや犬と遊び

お袋と親父と一緒に買い出しに行き

戸惑いながらも、桜なりに田舎生活を楽しんでいた。

夕ごはんの用意は

「お料理教室に通い初めたんですが…………
まだ全然ダメで……………。」と

シュンとして、自己申告する桜に

「大丈夫。
今の時代、こんな便利な物がいっぱいあるんだもん。
手を切って痛い思いせず、ドンドン使って
楽しく作りましょ!」と

今まで我が家で見たこともない道具が並んでいた。

「こうしたら、スライス。
こっちはみじん切り。
餃子だって、置いて挟むと…………ほらッ出来た!
ネッ!簡単でしょう?
難しく考えなくて良いの。
楽しく過ごすことが一番大事よ!」

………………………………………。

今日ほど、この人達の子供で良かったと思ったことはない。

ポロポロ涙する桜の頭を撫でて

「お袋、親父………ありがとう。」と言うのがやっとだった。