桜の咲く頃……… 君を想う

「あの………お口に合うか分からないのですが…………。」

そう言って差し出した桜のお土産は

この家では珍しいケーキだ。

「まぁ!!ありがとう。
早速いただいても良い?
ここは田舎だから、ケーキ屋さんなんて近くにないの。
お兄ちゃんが帰って来るときに買って来てくれるのが楽しみなのよ。」

ぐいぐい話しかけるお袋に

大人しい桜は大丈夫かと心配したが

思ったよりも打ち解け、二人でケーキの用意をしている。

「ただいま。」

日本間で新聞を読んでいる親父に声をかけると

「良い子そうだな。」とニヤニヤしながらこっちを見る。

「あぁ。」

「教え子に手を出しちゃあダメだろう。
なぁ~亨君。
何歳年下だ?」と……………。

これが嫌で………ギリギリまで帰るのを渋ったんだ。

親父は………

物わかりが良いと言えば聞こえはいいが。

………………ただのスケベ親父だ。

俺をからかうのが大好きで…………

片思いの長い俺を、何年もからかってきた。

…………と言うのも、春人が泊まりに来たとき

桜の事をあれこればらしたから。

たぶん、帰ると言った日からずっとワクワクしながら待ってたはずだ。