「初めまして。」

春人に紹介された女の子は、俺と5歳違いの人だった。

木下さんに雰囲気の似た、柔らかい感じで…………。

おっとりとした話し方まで似ていて驚いた。

春人いわく

『桜ちゃんのような女の子も沢山いる。
亨が気にする年の差や禁断も、クリアしている。
それでも桜ちゃんなのか、それとも別の女性なのかは………
亨しだいだからな。』と

だから敢えて、木下さん似なのかぁ。

優しいのか、意地悪なのか分からない春人の気づかいに苦笑し

デートをすることにした。



紹介されて、初めての人とデートする経験はなく。

どうしたものかと戸惑っていたら。

「亨さんとお呼びして良いですか?」と質問された。

呼び方かぁ。

以前6人でデートした時。

いつも『先生』と呼んでいる彼女が

『亨…………さ…………ん?』と恥ずかしそうに

はにかんで呼ばれた事を思い出した。

俺を呼ぶのも恥ずかしければ

俺に『桜ちゃん』と呼ばれるのは、もっと恥ずかしいみたいで。

顔だけではおさまらず、首まで真っ赤になっていた。

ホント…………初々しいよなぁ。

思い出に浸っていたら

「だったら…………映画でもどうですか?」と質問された。

マズイ。

初対面の彼女の名前さえ聞き漏らし

いつの間にか、目的地まで決まっている。

話しを聞いてなかった事を反省して

「では、映画を見ましょう。」と歩き始めた。