「奈緒?」
懐かしい声がして、私はとっさに振り返る。
「優生?」
名前を呼ぶと、彼はゆっくりと笑顔になった。
「久しぶり!」
まるで再会の喜びを噛み締めるようにゆっくりと彼はそう言った。



「…お、奈緒!」
「えっ?」
私はハッとして顔を上げる。私の前には呆れ顔で立っている詩織がいた。
「最近奈緒ボーっとしてる事多いよね。」
「ごめんごめん笑」
「もぉ、テスト終わったからって気が抜けてるんでしょ?」
「しっかりしてよねー」
「はいはい。」


季節は11月。すっかり冬になった。
テストが終わったのもあって最近の私は詩織いわくボーっとしてるらしい。
自分ではそんな感じしないのにな。


「それで、さっきの話だけどね?」
詩織が話始める。
「明日、土曜でしょ?テストも終わったし、
どこか遊びに行かない?」
「うん、いいね! どこに行こうか?」
「うーん、いつものショッピングモールでいいんじゃない?近いしさ、」
「そうだねー、」
「まあ、細かいことはまた後でメールするね。」
「じゃあねー」
「うん、バイバイ。」
そう言って詩織は部活に行ってしまった。
詩織はテニス部で、私は美術部。
性格も趣味も正反対な私達だが意外と友情は続いていた。
明日は、テニス部の部活が1日休みだか何とか言ってたけど、それで遊びに行きたいのかな?
そんなことを思いながら昇降口で靴に履き替え、
部活をしている人たちを横目に私は校門を出た。
帰り道にあるイチョウの木も、所々葉が落ちていて枝が見えていた。長く続くイチョウの黄色い絨毯。私はこの道を歩いて帰るのが好きだった。

__土曜日__

「おまたせー、奈緒待った?」
「ううん、あんまりー」
約束していた土曜日。約束の時間より5分遅れて来た詩織と合流してショッピングモールの中に入った。

「どこから行こうかー」
「どこでもいいよー。」
「じゃあとりあえず本屋さん行こう!」
「そうだね!」
詩織の提案に賛成して、私たちは本屋に向かった。

1時間後…

「どうする?もう一通り行ったよ?」
「あっ、待ってー。うちトイレ行ってくる。」
「了解〜、ここで待ってるねー」
ここで待ってるか、詩織はトイレ行っちゃったしね。あっ、お母さんに連絡してないや!
しないとな…
「奈緒?」
聞いた事ある声で名前を呼ばれた。詩織じゃない。
「えっ?」
振り返った先にいた人物に私は驚いた。
「優生…?」
それは8ヶ月ぶりのあいつだった。