彼が消えていくのが怖くて………。

「飯島君………」

私は彼の手をそっと握った。
優しい彼。
私に生きる意味、希望を教えてくれた彼。
そんな彼を好きになったの。
嘘をつかないで、ありのままでいてくれると思ったから。
だけど絶対に何か隠してるんでしょ?
私………なんとなくわかるんだよ?

「お願い………目を………、覚まして!」

私は………わかっていても君の口から聞きたい。
そして祈るしかないんだ。
生きていてくれますようにって。

「先輩………」

微かな声だった。
小さくて掠れていて微かな声だった。
だけど私にははっきり聞こえたんだ。
君が私を呼ぶ声が………。

「………飯島く」

私は目を覚ました彼をずっと見ていた。
そして涙を流しながら。
彼はうっすらと笑った。
でもなぜだか辛そうに見えた。
きっと………何かがあるんだよね?
何かが苦しめてるんだよね?

「………聞かせてくれる、飯島君のこと」

私はそっと………静かに、でもはっきりと言った。
そして飯島君はちょっと目を見開いていた。
きっと私が何も知らないんだと思ってたんだろうな。
でもね、私………わかったんだよ?
君をいつも見ていたから。

「………うん」