『だったらもう忘れなよ。そんな感情なんて』

忘れる?感情を?
忘れることができるの?
わからない。

《もう少しで始まります。生徒の皆さんはグラウンドへ集合してください》

「………行かなきゃ」

感情を忘れる。
気を許すこともだめ。
私が幸せになるのも………だめだ。

「いたいた、聖奈ちゃん!」

「………久我さん」

「………さん?君じゃないんだね」

「何かようでしょうか?」

「いや。実行委員だから前に行かなきゃじゃん!」

「………そうですね。ありがとうございます」

そして私は前に行った。
当然、そこには飯島君もいる。
だけど私はそんなこともうどうでもよかった。
だって全てを捨てたんだから。
忘れたんだから。

「それでは………」

私にはもうなにもない。
あの頃と同じ。
真っ暗闇に一人。
静かに声を押し殺してなくだけの女の子。

『そうしてればいいのよ、聖奈』

うん、わかった。


「おい、飯島遥斗。ちょっとこい!」

「?」

「お前、聖奈ちゃんに何かしたのか?あれから様子かますっごい変で………」

「え………」

いつも通り。
人間が嫌いな私。
そして写真を撮るのが好きな私。
これこそ完璧な私の世界だ。