すっかり日は高くなり。昨夜の雨が嘘のように晴れ渡る青空の下、咲夜は辰臣の要望に応えるべく、ランボーの散歩に同行していた。

最初、颯太も出掛ける準備を始めたのでランボーと三人で連れ立って出掛けるのかと思っていたら、辰臣がクリニックの奥から数匹のワンコ達をリードに繋いでわらわらと出て来たので、それを見た咲夜は納得しつつもその微笑ましい光景に思わず笑ってしまった。
ワンコたちは見ていて分かる程にそれは嬉しそうに尻尾を振っていて、同時に「うれしい」「たのしい」という喜びの『声』がいくつも聞こえて来る。
そばで準備を終えて待っていたランボーも、仲間たちと一緒なのを知ってかどこか嬉しそうだ。


だが、いざ歩き出すとワンコたちは嬉々としてそれぞれが思うがままの方向へと歩みを進め、数メートル距離を進めるのも困難な状況になってしまう。
ランボーのリードのみを引いて歩いていた颯太の横についていた咲夜は、度々足を止めては辰臣たちを振り返って待つ形になった。

「ごめんね、待たせちゃって。ちょっと多く()れすぎちゃったかな」

そんな状況に辰臣は眉を下げて謝罪の言葉を口にしつつも、嬉しそうに足元の彼らを見つめた。

「この子たちはね、ウチに来た頃はみんなこんな風に散歩なんてとても出来る状態じゃなかった子たちばかりなんだ。でも、今はこんなに元気一杯になってさ。こんな風に嬉しそうな姿を見てると、この仕事を選んで良かったなぁって…本当にそう思うんだ」

しみじみと、そして愛おしげに彼らを見つめる辰臣に。咲夜は温かい気持ちになる。

「でも、辰兄(たつにい)。人手が多い時に散歩させたい気持ちは分かるけど、例の場所までこのまま行くのは流石に無理があるんじゃないか?これじゃあいつまでたっても辿り着けないぞ」