心がささやいている

「だってラッキーだろ?落とし主からしてみれば、鍵の方から自分を訪ねてくれたワケだし、こっちはこっちで遠くの交番まで届けなくて済んだんだし。一石二鳥じゃん」
「一石二鳥…」

ナルホド。そういう意味。
深読みして不安になってた自分が馬鹿みたいに思える程に、幸村くんは穏やかに笑っていて、何だか不意に笑いがこみ上げて来た。

「……ぷっ…」

思わず吹き出して笑い出してしまった私に、「…なんだよ?俺そんなに可笑しなこと言ったか?」なんて首を傾げていたけれど。

「幸村くんって、面白いね」

ひと通り笑ってから笑いを収めながら、そう言うと。

「そりゃ、どうも。それは誉め言葉として受け取っとくよ」

そう言って返してきた時の穏やかな彼の瞳が、何故だか嬉しかった。




その後。

普段通り、辰臣の待つ『救済センター』へと足を踏み入れた颯太は、これまたいつも通りお茶の用意をする為、給湯室でやかんを火に掛けていた。
自分たちの普段使っているカップ二つと、昨日と同様にお客様用のカップ一つを戸棚から取り出して並べる。勿論、これは学校帰りに問答無用で連行してきた咲夜の分だ。
基本的に辰臣は、依頼で外に出たり急患を受け入れたりとスケジュールなどあってないようなものなのだが、颯太が学校を終えて此処へやって来る時間がだいたい辰臣の休憩時間になっていた。それは、敢えてそうするように颯太が辰臣に言って決めたことだった。
辰臣は、仕事に一生懸命になると自分のことを後回しにする癖がある。昼食抜きなどは日常茶飯事。クリニックの診療時間が過ぎていようが急患などの連絡が入れば、すぐに受け入れてしまう。