「何?案外とっつきにくい奴だったりするワケ?」

少しだけ声を落として聞いてみれば、「そんなワケないだろっ!」と妙に意気込んだ返事が返ってきて正直戸惑う。続けて諭すように友人は語り出した。

「彼女ってどこか独特な雰囲気持ってるだろ?何となく声掛けづらいっていうかさ…。不思議な雰囲気まとってるっていうの?そこへ、あんま変なこと話し掛けらんねぇじゃん」
「あー…」

『変なこと』がどういう類のことをいうのかは分からないが、そういう人物こそ『とっつきにくい奴』と言うのではないのだろうか?そんな疑問を浮かべながらも颯太は黙っておいた。そうしてその友人とはその場で別れ、自分の教室へと戻っていく。
とりあえず、顔は覚えた。

(そして、やっぱり変わり者っぽい…と)

颯太の中では、そう認識されたのだった。




(…何だろう。さっきから尾行(つけ)られてる気がする…)

学校からの帰り道。咲夜は前を向いて歩きながら、先程から一定距離を保つように後方を付いてくる人物の気配を探っていた。
普通に人々が行き交う公道だ。誰が歩いていてもおかしくはない。当然、たまたま方向が同じだけということもあるだろう。だが、学校を出た辺りからずっと…というと、どうだろう。それも、ずっと同じ距離を保って…となると。

(それに、なんか…。視線を感じるような…)

心の囁きは聞こえて来ない。でも、何かしらの意思を感じる気がするのだ。
ただ、まだ学校からの道のりとしては然程(さほど)複雑でもない。これが住宅街に入ってからも続くとなると、ちょっと。結構、怖いけれど。