人は言葉で自分の『想い』を伝えることが出来る。


口で伝える。
文字で伝える。
手話など身振り手振りなどで伝え合う。

使っている言語や表現方法は実にさまざまだけれど、それはとても自然なカタチで日々世界中の者たちの間で行われている。
それこそ人だけのものに限らず、全ての生物間で行われていることなのかも知れない。種の違うものの間では伝え合うことが困難なだけで。

けれど、本当は…。


―――それが全て『本心』とは限らない。



人には、表と裏の顔が存在することがままある。

例えば、口で伝えて来たその言葉が本当にその人物の本音だとは限らないのである。口では何とでも言えてしまうからだ。

だからと言って、全てに悪意があるという訳でもない。口が上手い人もいれば、想いを言葉にすることが苦手な人も中にはいる。それに、『口は災いの元』という言葉もある。思っている本音を皆が全て口にしてしまえば、世の中は大変なことになるだろう。


そもそも人が口にするその言葉だけが、その人の想い全てという訳でもない。秘めた想いだって存在するだろうし、全てを曝け出している人など、そういない筈だ。

そんなことは解っている。
頭では理解しているのだけれど…。


私は、人が怖い。


目の前で本当の『想い』と違う言葉を口にされることに、ずっと怯えを抱いている。

全ての人が『嘘』を口にする訳ではないことぐらい解っているつもりだ。でも…。

私には聞こえて来てしまうのだ。

目前の人物が発している言葉とは別の、心に秘めた相手の本音が。



心の囁きが…。