真人が、学校を休んで1週間たった。
真人の休みは、絹川校長が保健室で
美咲に言ったことでわかったのだ。
「美咲先生、真人先生の様子を
見て来てくれますか。
この時期は、インフルエンザが
はやっていますから心配なんですよ」
「わかりました、帰りに
義弟のところに行ってみます」
「何かあったら連絡をください。
対応できることはしていきますので
よろしくお願いします」
無断欠勤をするなんて、
真人に何かあったのだろうか?
美咲は、不安を覚えながら
真人のマンションに行ってみた。
部屋のチャイムを鳴らしたが応答がない。
しかたがなく、美咲は
管理人さんに事情を話して
真人の部屋の鍵を借りた。
それを使って部屋に入ったら、
真人が体の調子を崩していた。
「義姉さん、どうしたの?」
「ごめんなさい、勝手に入ってきて。
あなたが、学校休んでいるから
心配になってきたの。
どこか、具合でも悪いの?」
「大丈夫だよ、風邪だから心配ないよ」
「ダメよ、風邪でも
肺炎になったら大変じゃない。
高見沢家の主治医に
診察してもらいましょう」
美咲は、高見沢家の主治医の柴田医師に
真人の診察を依頼した。
柴田医師は、真人のマンションに来ると
すぐに真人を診察した。
「インフルエンザですね。
熱も40℃あります。
点滴をしますので、
1週間安静にしてください。
薬を処方しますので、
あとで取りに来てください。
それでは、お大事に」
「ありがとうございました」
美咲は、思った。
瑠衣子は、どうして真人の看病を
しなかったのだろうかと…。
もっと早くに気がつけば、
真人が苦しまなくてすんだのにと…。
「義姉さん」
「真人さん、これで元気になるわ。
ゆっくり、体を休めてね」
「ありがとう、義姉さんが
来てくれてうれしかった」
「ごめんなさいね、
気がついてあげられなくて。
もっと早くに、病気のことを
知っておけばよかったわね」
「義姉さんのせいじゃないよ。
オレ、義姉さんが来てくれて
うれしかったよ」
熱で苦しい息のなかで真人は、
一生懸命美咲に言葉をかけていた。
「真人さん、苦しいの?
瑠衣子を呼ぼうか?」
「いやだ、呼ばないで。
義姉さん、お願いだよ。そばにいてよ」
「真人さん、瑠衣子を呼んであげる。
待っていて、連絡するから」
「ダメ、知らせないで!
義姉さん、寒くて苦しいよ。
お願いだよ、オレを温めてくれよ」
まるで小さい子供が母親を求めるように
真人は美咲を求めていた。
真人にとって本当に
そばにいてほしいのは、美咲だった。
兄の妻であってもかまわない。
自分の病気のことをわかって
そばにいてほしいとそう思っていた。