そして、美咲の出張の翌日であった。
この時の真人は保健室にいる
美咲のところに行った。
「義姉さん、大変だよ。
兄貴のことで、
とんでもないことがわかったよ」
ミントグリーンの上下のジャージに
白のトレーナーを着た真人を見て
美咲は、カッコイイと
見とれてしまっていた。
「義姉さん、落ち着いて
聞いてくれよ。
兄貴は、浮気をしていた。
兄貴と姉貴との関係は、
義姉さんと結婚をする前から
続いていたんだ。
実際に家の洗面所に
姉貴のシャンプーが
あるのが証拠だよ。
離婚をするなら、
ちゃんと証拠になるよ」
「邦雄が、お義姉さんと
関係を持っていたなんて
信じられないわ。
邦雄の浮気はわかったけど、
相手がお義姉さんなんて、
誰が見ても理解ができないと思うわ」
「義姉さん、離婚をするなら
早いほうがいいよ。
離婚の原因は、兄貴にあるから
慰謝料を取れる。
それに、おやじに頼んだら
義姉さんの離婚後の生活を考えてくれる。
義姉さんの悪いようにはしないよ」
離婚して真人との未来があるのなら、
美咲は離婚に踏み切っただろう。
だけど、離婚して未来がない美咲には
邦雄の浮気に耐えるしかない。
苦しい選択に美咲は、涙を流していた。
「義姉さん」
真人は、美咲を抱きしめていた。
「言っただろう、オレが守るって。
忘れたのか?
苦しい時は、オレに話してよ。
義姉さんは、一人じゃないから」
真人の胸で泣いていた美咲は、
邦雄から奪ってほしいと
願うようになっていた。
「ごめんなさい、取り乱してしまって」
「いいんだよ、義姉さんを
悲しませる兄貴が悪いんだ。
このまま、義姉さんと
離婚してしまえばいいんだよ。
そうしたら、兄貴の目が覚めるよ」
そう言う真人は、邦雄に対する
怒りでいっぱいだった。
美咲を泣かせるなんて、
実の兄でも許せない。
泣いている美咲を抱きしめたのも、
兄を許せない感情がそうさせたのだ。
このまま、美咲を奪いたいと思ったのは
自然の流れとなっていた。