子供に母乳を与えていた美咲は、
子供を愛おしげに見ていた。
真人の子供を産むことができて
幸せを感じていた。
「美咲、よく頑張ったな。
とても、きれいな娘だ。
ありがとう、うれしいよ」
「あなた」
「これから子育てが忙しくなるが、
オレも手伝うからな」
真人は、喜びで言葉が出なかった。
これからは、美咲と娘のために
頑張っていこうと決意していた。
「あなた、この子の名前を決めなきゃ」
「そうだな、おやじが決めるんだって
張り切っていたけどどうかな?」
「それなら、もう決めてある。
この子の名前は、詩織だ。
詩を織るという意味でつけた」
「詩織、いい名前ですね」
「おやじ、ありがとう。
娘に似合っているよ」
「ありがとうございます、お義父さん」
「これからは、家族三人で仲良く暮らせ。
おまえたちが幸せなら私たちは十分だ。
こうして、孫の顔を見せに
来てくれるだけでかまわないからな」
「おやじ、オレは教師を捨てられない。
後を継げなくてごめんよ」
「それは、先の話だ。
今は、教師としての
仕事を全うすることを考えろ。
後を継ぐのは、仕事を全うしてからだ」
「ありがとう、おやじ。
オレ、いつか言ってくれた
人の痛みがわかる教師になるよ。
そして、家族を幸せにしてみせるよ」
「その心意気を忘れるな。
おまえも、父親になったんだ。
しっかり、家族を守れ」
源蔵の言葉に真人は、
父親として娘を守っていくと
決意していた。
美咲は、思った。
家族が、いつまでも幸せであるように
と願ってやまなかった。
子供が産まれた幸せと夫の愛情が、
今の幸せであると美咲は実感していた。