高見沢家の本宅にいた美咲は、
客間にあるベッドで休んでいた。
「もうすぐ、助産師さんが来ますからね。
しっかり、気を持つのですよ」
静子は、美咲の傍らに付き添って
美咲の看病をしていた。
「みんな、こうして
赤ちゃんを産むのですよ。
怖がらないでいいですからね」
美咲は、苦しいなか助産師さんから
教えてもらった呼吸法を試していた。
今、おなかの子供が
産まれようとしている。
苦しい息のなか、美咲は
子供を産むことに集中していた。
そして、助産師さんが部屋にやってきた。
「奥さま、若奥さまの
出産は間もなくです。
ここからは、私の出番です。
元気な赤ちゃんを
お見せできるように努めます」
「頼みましたよ」
「若奥さま、赤ちゃんは
もうすぐですよ。
しっかりと私に合わせて
呼吸をしてください」
部屋の外では、源蔵と静子
そして真人が子供が
産まれるのを待っていた。
真人は、不安が隠せないのか
落ち着かず部屋をうろうろしていた。
そしてしばらくして、赤ちゃんの
元気な泣き声が聞こえてきた。
生まれたての赤ちゃんを
助産師さんがお湯につけて
産後の処理をしていた。
「おめでとうございます、
かわいいお嬢様が産まれました」
産まれた子供は、女の子だった。
「ありがとうございます、家内は?」
「大丈夫ですよ、若旦那様。
母子ともに健康です」
「ありがとう、よくやってくれた。
心から礼を言うぞ」
源蔵は、初孫が産まれたことを
とても喜んでいた。
「今、対面ができますか?」
「もちろんです。
どうぞ、お入りください。
顔立ちの整った
きれいな赤ちゃんですよ」
助産師さんの言葉に促されて
真人と源蔵そして静子が
部屋に入っていった。
部屋の傍らにベビーベッドがあった。
そして、美咲は生まれたばかりの
赤ちゃんに母乳を与えていた。
生まれたばかりの子供を見て
真人は、父親になったことを
実感していた。
「あなた、真人の赤ちゃんの時に
似ていますわ」
「本当だな、真人が
産まれた時を思い出すよ」
「あなたは、とても喜んでくれましたね」
「そうだな、あの時ほど
幸せなことはなかったよ。
静子、苦労をかけたが今はとても幸せだ。
こうして、孫を見ることが
できたんだからな」
源蔵と静子は、子供が産まれたことを
とても喜んでくれた。
真人は、うれしかった。
自分を産んでくれて育ててくれた
両親に感謝の気持ちでいっぱいだった。