美咲と真人の結婚式が、
高見沢家の邸宅で行われた。
白のタキシード姿の真人と
白のウェディングドレスを着た美咲は、
幸せでいっぱいだった。
「おめでとう、美咲。幸せになってね」
「奈津子、ありがとう」
「今日のあんた、本当にきれいよ。
今度は、真人に幸せに
してもらいなさいよ。
真人、美咲を泣かしたら
許さないからね」
「厳しいなぁ、奈津子。
いつまでも、それじゃ嫁にいけないぞ」
「よけいなお世話よ。
あたしは、一人でも平気。
真人、人の心配するより
美咲と赤ちゃんの心配しなさいよ。
これから親になるんだから」
「言われなくたってわかっているよ。
相変わらず、口だけは達者なんだからな」
「真人、美咲さん、おめでとう」
イタリアに住んでいた麻子が、
結婚式のために一時帰国をしていた。
1年前と比べて
表情が穏やかになっていた。
「姉貴、ありがとう」
「ありがとうございます、お義姉さん」
「二人で幸せになってね。
私もすてきな人ができてから、
とても幸せになったわ。
今思うと、イタリアに行ってよかったわ」
「姉貴の恋人ってどんな人かな?
会ってみたいな」
「ありがとう、今日の結婚式に
彼も来ているの。お父様に
彼を紹介したら許してくれたわ。
とても、優しい人よ」
「麻子、どこ?」
「ここよ」
麻子の恋人は、イタリアで
レストランをしているシェフだった。
日本にも留学していたこともあって、
二人は意気投合したようだ。
真人と美咲は、麻子が恋人である男性と
幸せになってほしいと願っていた。
「姉貴、幸せそうでよかったな」
「そうね、イタリアでの生活に
慣れて楽しんでいるようね」
「姉貴の結婚式は、派手にやるだろうな」
「そうね、たくさんのお客様で
いっぱいになるでしょうね。
高見沢家の一人娘だもの。
お父様も張り切るかもね」
「そうだな」
麻子を見て真人と美咲は、
幸せになってほしいと願っていた。
そして、結婚式の宴は夜遅くまで続いた。
今夜は、高見沢家の邸宅で泊まって
翌日に新婚旅行に行くことになっている。
新婚旅行は、グアム島に行くことにした。
グアム島は、日本人がよく行くので
治安の心配はないと源蔵が決めたのだ。
静子も源蔵の意見に賛成して、
二人を行かせることにした。
今夜は、結婚式を迎えての初めての夜。
美咲は、真人と初めて
結ばれた夜を思い出していた。
あの夜、熱を出して苦しんでいた真人を
看病していた時に好きだと告白された。
それから、恋人としてつきあってきて
美咲は幸せを感じていた。
今、真人と夫婦になって
美咲は幸せを感じている。
この幸せが、永遠に続いてくれることを
美咲は願っていた。
「どうした?眠れないのか?」
「うん」
真人が起きてきて美咲を抱きしめた。
この人がいてくれたら幸せだ。
美咲は、そう思っていた。
「美咲、もう何も恐れることはないよ。
オレたちは、夫婦になったんだ。
これから、二人で一緒に歩いていこう」
「あなた、ふつつかな私ですが
よろしくお願いします」
「今さら何を言ってんだよ。
オレたち、遠慮をする間柄じゃないんだ。
オレたちは晴れて夫婦になったんだ。
オレたち、幸せになろうな」
「はいっ」
美咲は、うれしかった。
これからは傍らに真人がいる。
それだけで幸せだった。
そして、産まれてくる子供も
楽しみになってきていた。