この日、真人は美咲を
家まで送っていた。
毎日のように心配して
自分の食事をつくってくれる
美咲が愛おしく感じていた。
以前からずっと秘めていた恋が
成就して真人は癒やされていた。
「そろそろ家だな」
「そうね」
言葉が少なくなってきたのは、
離れたくないという気持ちが
強かったのだろう。
お互いに思いを寄せていながら、
現実の生活に戻らなければいけない
苦しみに、二人は耐えなければ
いけなかった。
そうしていくうちに、
車は美咲の家に着いた。
しかし、家の様子が
違うことを察した真人は、
美咲に車を降りるなと言った。
不思議に思った美咲は
家の前を見た。
すると、邦雄が麻子と
抱き合ってキスをしていたのだ。
ショックを隠せなかった
美咲は、真人に言った。
「真人さん、今の見間違え
じゃないよね?」
「オレも見たから間違いないよ。
間違いなく兄貴と姉貴だよ」
「私、邦雄と離婚したら
どうなるのかしら?」
「オレがそばにいるよ。
愛しているから」
「真人さん」
「今夜は泊まっていけよ。
今の様子を見て、
平静を装えるほど強くはないだろう?」
真人の言葉に美咲は、静かにうなづいた。
邦雄の裏切りを目の当たりにした今、
邦雄との離婚を決めたのは
自然の流れだった。
美咲は、携帯から自宅に電話を入れた。
今夜は、帰れないと…。
邦雄は、美咲が帰れない
理由がわかっていた。
実の姉との関係を知らずに
尽くしてくれる美咲に
すまない気持ちでいっぱいだった。
自分ばかりか弟の真人まで
心配をしてくれる美咲に感謝をしていた。