真人が、インフルエンザに
かかってから一週間が過ぎた。
体調も元に戻ってきて
回復の兆しがみられてきた。
この一週間、美咲は
真人の看病をしてから
自宅に帰っていたので
帰りが遅くなっていた。
それでも、美咲は毎日
必ず奈津子の店によって
話を聞いてもらっていた。
奈津子は、幼なじみとして
美咲が心配だった。
このまま体を壊さないかと…。
「あんたもよく頑張っているわね。
無理すると体に毒よ。はいっ、コーヒー」
「ありがとう、奈津子。
私が、好きでやっているから大丈夫よ」
「だけど、瑠衣子はどこまで
神経がずぶといのかしら。
自分の彼氏が病気なのに、
美咲に看病を任せて
何を考えているのかしら。
あたし、腹が立っているのよね」
「いいのよ、瑠衣子だって
仕事が忙しいから無理は言えないわ」
「あんたは、本当にお人よしよね。
瑠衣子はわがままだから、
仕事を口実にあんたに甘えているに
ちがいないわよ。
気をつけたほうがいいわよ」
奈津子が、瑠衣子に対して
怒るのは当然だろう。
奈津子には話していないが、
真人が熱を出した時美咲は、
何度も瑠衣子を呼ぼうかと言った。
ところが、真人はそれを拒否した。
瑠衣子といるより
美咲と一緒にいたいと言ったからだ。
そして、美咲は真人に身を任せて
二人は愛し合った。
これは、誰にも言えない秘密。
邦雄にも話せない秘密の関係だから。
「美咲、どうしたの?疲れているの?」
「えっ?何か言った?」
「真人の看病で
疲れていないかって思ったの。
毎日真人に夕食をつくって、
それから家で夕食をつくって、
毎日忙しくして
体を壊さないかって思ったの。
無理はしないようにね」
「ありがとう、そろそろ行くわ。
邦雄に夕飯をつくってあげなくちゃ」
「そうね、たまには旦那さん孝行を
してあげなさいよ。気をつけてね」
美咲は、奈津子の店を出ると
スーパーによって買い物をした。
真人の夕食と家の夕食を買い、
買い物袋が重たくなるほどだった。
美咲は、先に真人のマンションに行った。
真人の部屋の合鍵を使って
部屋に入り、夕食をつくる。
これが、最近の日課になっていた。
美咲は、真人が元通りに回復すれば
それで十分だと思っていた。
こうして、思いがかなったことで
美咲に怖い物はなくなっていた。
「美咲、オレ明日から
学校に行けそうだよ」
「そうなの?」
「柴田医師が、今日往診で来てくれて
全快だって言ってくれたよ」
「よかったじゃない、生徒たちが喜ぶわ。
みんな、あなたが学校に来るのを
待っていたのよ」
「そうか、みんなが心配して
くれていたんだ。
明日からバスケの朝練を頑張るぜ」
美咲は、ほっとした。
真人が、元気になったことが
うれしかった。