「美咲先生」
「新田先生」
新田朗、美咲と真人の同僚で
数学を教えている。
バスケットボールは、
中学からやっていたので
顧問の代理としては最高の助っ人だ。
「バスケ部の生徒が、
真人先生の帰りを待っています。
毎日、僕の厳しい練習に
頑張ってついてきてくれています」
「そうですか、義弟が聞いたら
うれしいでしょうね」
「美咲先生も無理をしないでください。
毎日、真人先生の看病を
しているんですから」
「私なら大丈夫よ。ありがとう」
朗の言葉が、美咲はうれしかった。
バスケットボール部の生徒だけじゃない。
朗も真人を認めていたことに
喜びを感じたからだ。
それから放課後になると、
美咲は真人のマンションに行き、
夕食を毎日つくっていた。
真人は絶対安静なので、
美咲は真人から渡された
部屋の鍵を使って入っていく。
それが、今の美咲には幸せな時間だった。
愛する人のそばにいる。
つかの間でも幸せに酔いしれていた。
「美咲のおかげで熱が下がったよ」
「よかったわ、元気になって。
でも、まだ学校にいけないから
安静にしていてね」
「うん、わかった。オレは、おまえが
そばにいてくれるだけでうれしいよ。
このまま、ずっといような」
「真人さん、ありがとう」
邦雄にはない炎のような情熱を持つ
真人に美咲は恋をしていた。
このままずっと幸せが
続きますようにと願っていた。
真人も同じ気持ちだろう。
高校の時から憧れていた美咲と
恋人になれたのだから。
兄の妻でもかまわない。
美咲は、自分が守る。
姉と関係を持った兄に渡さない。
真人は、美咲と一緒にいて
そう感じていた。