美咲は真人の薬をもらいに
柴田医師のところから帰ってきていた。
帰ってきた美咲は、真人に
薬を飲ませて熱が下がるように
何度も水でぬらしたタオルで、
真人の頭を冷やしていた。
さすがに、熱が高いだけに
何度も呼吸が荒くなっていた。
「義姉さん、寒いよ。
お願いだよ、オレを温めてくれよ」
「真人さん、瑠衣子を呼ぼうか?
すぐに、連絡つけるから」
「いやだ、瑠衣子じゃダメなんだよ。
お願いだよ、義姉さん。
オレのそばにいてよ。
オレ、義姉さんが好きなんだよ。
ずっと、義姉さんだけを見ていたんだよ」
真人の突然の告白に
美咲は、驚きを隠せなかった。
美咲にとって思いはかなわないと
思っていた淡い初恋。
まさか、真人も美咲を好きでいたとは
夢にも思わなかったのだから。
「私も、真人さんが好きだった。
だけど、思いがかなわないと諦めていた。
瑠衣子は活発で明るかったし、
私のように地味な女の子は
似合わないと思っていた。
だから、形が変わっても
そばにいられる幸せで
十分だと思っていたの」
「それは、義姉さんの親友だからだろ?
わかっているよ、オレ。
オレにとって、義姉さんは
憧れの女性だった。
いつも、バスケの練習を
見に来ていたのをずっと見ていたよ」
「私は、邦雄も瑠衣子にも
うそはつけないわ」
「誰にも知られなきゃいいんだよ。
このまま、オレたちだけが
知っていればいい。
オレ、本気なんだよ。
オレを男としてみてくれよ」
真人のまなざしに、
美咲は戸惑いを隠しきれなかった。
自分のことを本気で愛している。
邦雄に裏切られた今、
真人の告白が炎のように
美咲の心を揺れ動かしていた。