美咲は、真人の病気のことを
すぐに邦雄に電話を入れた。
「真人が、病気なのか。
わかった、今夜は真人の看病をしてくれ。
熱が下がるといいがな。
真人を、頼んだぞ」
「美咲さん、帰らないみたいね」
「真人が、熱を出した。
今夜は、看病をするって」
「義弟思いの優しい姉さんだこと。
だけど、私には美咲さんが
いない時が好都合だわ」
「姉さん、もうやめよう。
美咲は、何も知らないんだ。
何も知らないで尽くしてくれる
美咲を苦しめたくない」
「いやよ、あなたが美咲さんを
愛してしまったなら許さないわよ」
麻子の言うように邦雄は、
美咲を愛してしまった。
だから、邦雄は美咲に
罪悪感を持っているのだろう。
何も知らずに自分のために
尽くしてくれる美咲に
麻子との関係を知られたくない。
このまま知らないまま、
麻子と別れたいと思っていたのだ。
「邦雄、あなたは私の命なのよ。
誰にも渡さないわ。
美咲さんと結婚したのも、
お父様が決めたことだもの。
私たちは、今までどおりに
つきあっていけばいいのよ」
「姉さん、もうやめよう。
オレは、美咲を愛している。
わかってくれ」
麻子は、美咲に嫉妬していた。
実の弟であるが、
邦雄を奪ったことで
反発を感じていた。
それが美咲への憎しみに
変わっていた。
「邦雄、私は別れないわよ。
美咲さんと別れてくれるほうが
どれだけいいかしら。楽しみが増えたわ」
ここまでくると、麻子が
悪魔のように恐ろしくなってきた。
邦雄は、麻子との関係を
断ち切ることができないでいる。
自分の情けなさが歯がゆく感じていた。