なるちかくんの耳には届かないくらいの声で毒づく。
わたし的には、『人たらし』は褒め言葉じゃない。
「んー? ほのかちゃん、なにか言った?」
「言ってないっ」
「うわ、その反応は絶対なんか言ったろ。気になるじゃん」
「なるちかくんには言いません!」
「俺に聞かせらんないようなこと言ったんだ、へーえ」
くすくすと笑いながら、なるちかくんが距離を縮めてくる。
元から近距離だったのに、さらに。
パーソナルスペースなんて丸無視だ。
なるちかくんは慣れてるかもしれなくても、わたしは慣れてない。距離が近いだけで、ふつうに、心臓がばくばくして大変だ。
じわじわ耳のあたりから熱くなってくるのを感じて、もうこれ以上は────と顔を背けようとして。
「ほのかちゃん、そんな顔したら────」
なるちかくんが、何か言いかけたタイミングにぴたりと、保健室の扉が開く音が重なった。
ガラガラッと、ちょっと荒っぽいその音は。
「ほのか」
「っ、りんくん……っ?」



